星屑
魔法使い発言の次は、運命論だ。


馬鹿馬鹿しくてやってられないと思いながら、あたしは肩をすくめて宙を仰ぐ。



「ただの偶然を、運命なんて言葉で括らないで。」


「じゃあ俺が、無意識のうちに魔法を使ったのかもね。」


呆れ過ぎて、言葉が出なくなる。


相変わらずふわふわとしていて、その言葉ですらも捉えどころなんかまるでない。



「悪いけど、そういう発言に心躍らせるほど、あたしは可愛い乙女なんかじゃないの。」


「でも、星は見れたでしょ?」


「晴れれば見えるのなんて当然でしょ?」


可愛いね、と勇介は笑う。


どこからどう繋がってその台詞に至るのかはナゾだけど、会話にならずに肩を落とす。



「アンタ結局さ、そういうこと言ってあたしとまたヤりたいだけなんでしょ?」


「俺は奈々が好きだよ。」


そんなことは聞いてない。


今更ながら、酒の力は怖いものだと思った。


酔っ払ってて正常な判断が出来なかっただけで、あたしは間違って、こんな意味不明男と一夜を共にしてしまったわけなのだから。



「忘れて、って言ってるんだけど。」


「でも、奈々だって忘れてない。」


ぞくりとするほど、妖艶な瞳。


思わず目を逸らしてしまえば、それを見逃さなかった彼はまた口元を上げる。


手首を持ち上げられ、びくりとして視線をそこに落としてみれば、勇介はあたしの人差し指をぺろりと舐め上げた。


煙草と、チュッパの甘い香りが混じる彼は、くすりと笑ってあたしを見た。



「奈々が望んだから会えたのかもね。」

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