星屑
息を飲んで、なのに意志とは別に、あの夜の記憶が掘り起こされる。


息遣いさえ鮮明で、瞬間、弾かれたようにあたしは、その手を振り払った。


同じ学校だったどころか、今まで同じ学年にこんな人がいたなんてことを互いに知らなかった方が不思議で、なのに初対面の時から初めて会ったような気がしなかった。


それを彼は、運命という言葉に置き換えた。



「じゃあ、まずは友達になろう?」


今度の勇介は柔らかく笑う。


自然と安堵している自分に気付き、振り回されてるな、と視線を逸らした。



「本気で言ってる?」


「俺は嘘なんかつかないよ。」


晴れたし、星は見れたし、本当にあたし達はまた会ってしまったのだ。


ただの偶然も、ここまでくるとさすがに怖い。



「“友達”はセックスなんてしないんだよ?」


いぶかしげに眉を寄せてみれば、なのに彼はどこか可笑しそうに口元を緩める。



「あの夜のことにこだわってるのは奈々の方だね。」


はっとして、次にはひどい後悔に襲われた。


勇介のそんな言葉も当然で、どう見たって忘れていないのはあたしの方だ。



「約束、覚えてるよね?」


あの夜、勇介が魔法使いだと口外しないと言ったアレのことだろう。


つまりはあの日のことは、互いに誰にも言わないから、と暗に言いたいのだろうけど。


捕まったのは、どうやらあたしの方らしい。



「わかった、友達ね。」

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