星屑
諦めてそう言った瞬間、チャイムの音が鳴り響いた。


まるで答えに満足したかのように、口元に笑みを浮かべた勇介は、あたしに背を向けるようにきびすを返す。


廊下に溢れ出す人波が、すぐに彼をそれへと紛らせ、気付けば後ろ姿が消えていた。


まるでそれは、チャイムの音すら操っていたかのようだ。



「…マジで魔法使いじゃないんだから。」


肩を落とし、あたしは改めて教室まで歩を進める。


休み時間の人で溢れる廊下を歩いていると、その熱気に酔いそうになるけど。


それよりもっと、ずっと困ったことになってしまった。


ぶっちゃけ目眩すらも感じてしまい、来て早々に帰ってやろうかとも思うけど。


教室へと入ると、一瞬こちらに向いたみんなの視線は、だけどもすぐに興味もなさそうにあたしから逸らされた。



「奈々、おっはー。」


いの一番に近付いてきたのは、今日も驚くほどにギャルでいらっしゃる、沙雪。


彼女とは、二年で同じクラスになったものの、前からの仲良し。


沙雪の声で気付いたように、今日も驚くほど美人の樹里が来て、あたしはため息を混じらせる。



「樹里、アンタ何考えてんの?」


「何が?」


「ヒロトに余計なこと言わないでよ。」


あぁ、と彼女は笑う。



「だってヒロト、奈々に一途じゃん。」


「どこがよ。」


ギャルと美人に囲まれ、あたしはなんて平凡なんだろう、と思うのだけれど。


大抵はいつも、この3人で一緒にいる。

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