星屑
普段怖い顔しかしていない彼の、たまに見せる不器用な優しさは、やっぱり戸惑うことしか出来ない。


一体どれほど静止していただろう、「奈々。」と呼ばれた名前にまた驚き、瞬間に身を強張らせた。



「なぁ、マジで付き合えよ。」


降りしきる雨の音の中で、確かに聞こえたヒロトの台詞。


あたしを見据える瞳は真剣で、思わず視線を泳がせたその瞬間。


捕えられていた腕をまた引かれ、バランスを崩した時にはすでに遅かった。



「…ちょっ…」


パサリと落ちたあたしの傘と、触れた唇。


気付けばヒロトにキスを奪われる格好になっていて、焦ったように体を離した。



「…何で、こんなことっ…」


これは事故だと思いたいのに、彼の瞳はそうはさせてくれないらしい。


唇を手の甲で拭うように押さえてみても、ヒロトは表情を崩すことはなかった。



「お前、ホント危機感ねぇな。」


それはあたしの唇を奪ったヤツの台詞じゃない。


何もしないと言っていた言葉を鵜呑みにしてたわけではないが、唇を噛み締めてみても、雨の冷たさにくじけてしまいそうになる。


あたしひとりそれに打たれ、傘を差している彼は肩をすくめた。



「なぁ、風邪引きたいわけ?」


アンタの所為でしょ、ときつく睨み返すと、ヒロトは舌打ちを吐き捨てる。



「そんなに俺が嫌?」

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