星屑
「そんなことより、奈々は?」


興味本位でもなく、樹里は視線を向けてきた。


どきっとしたものの、曖昧に笑ってしまえばまた、拭えない闇に落ちてしまいそう。



「あたしのことは良いってば。」


「良くないから聞いてんでしょ?」


どうやら誤魔化せそうにないらしい。


でも、だからといって、全てを話してしまうことにはためらいを覚える。


教室の中は賑やかさに溢れ、気分の悪さを隠せなくなりそう。



「ねぇ、ホント最近、顔色悪いよ?」


沙雪の心配そうな瞳が僅かに揺れた。


思わず唇を噛み締めてみれば、つまんない言葉のひとつも思い浮かばない自分がいる。



「ごめん、帰る。」


それだけ言い、荷物を持って立ち上がった。


ふたりは顔を見合わせたものの、引き留めるようなことはしない。


正直今は、誰かの色恋沙汰を聞けるほど、心に余裕は残されてはおらず、自分自身のことで精一杯だった。


空はちょうど雨の切れ間で、だけども重苦しい色の雲が占めている。


傘はあの日、拾うことさえ忘れていたので持ち合わせてはおらず、正直ほっと安堵した。


時刻はお昼時で、制服を着たあたしの行ける場所なんて限られている。


重い体を押し、足早にあの人の住むマンションへと向かった。

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