星屑
「ねぇ、スッチってもしかして、樹里の好きな人知ってんの?」


「知ってるけど、言わない約束だし。」


「…うちらの知らない人、って聞いたけど。」


「さぁ、どうだろうね。」


また笑ったスッチに、これ以上聞く気も失せた。


脱力するあたしをよそに、全てを知る彼はのん気に鼻歌なんかを混じらせる。


どうやらあたしの周りってのは、それぞれに秘密を抱えているらしいが。



「まぁ、俺的に今一番動向が気になるのは、奈々ちゃんですけどね。」


「…あたし?」


お互い、自分のことに話が及ぶとバツが悪くなってしまう。


不貞腐れるように口を尖らせると、三角関係も大変だねぇ、と彼は言う。



「何か、スッチと付き合うのが一番楽そう。」


「それも面白いね。」


あははっ、と彼は声を上げた。


まるで遊び事のように笑うスッチを見つめながら、悩みなんて尽きることはない。


不意に、抜けるような青い空を見上げた彼は、ぽつりと呟く。



「でもさ、実際付き合ってるみると、相手に対しての見方って変わるじゃん?」


「…だからヒロトと付き合ってみろ、って?」


「そんなことは言ってないけど。」


どうにも言ってることが定まらない。


眉を寄せるあたしに彼は、ふっと笑う。



「俺、邪魔みたいだからついでにもう、早退するわ。」

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