星屑
屋上で浴びる陽も、前より少しばかり強いものになったと思う。


吹いた風に目を細め、見上げた彼は、やっぱり煙草を咥えて空を仰ぐ。


一緒にいるだけで落ち着くんだから、嫌になるけど。



「もうすぐ夏休みだね。」


勇介はおもむろに口を開き、うん、とあたしは返した。



「どうしよっか?」


それが何についての問いかわからずにいると、「どっか行く?」と彼は付け加える。


目先のことにばかり囚われていて、思えばそんな一大イベントのことが頭の片隅にもなかったあたしは、多分高校生とは呼べないだろう。


だから考えあぐねていると、突然、ポケットに入れていた携帯のマナーが振動した。


驚いて持ち上げてみれば、メールの着信ランプが点灯していて、“樹里”と表示されている。



《あたしスッチと一緒に早退するし、沙雪にも言っといて。》


たったそれだけの内容だったが、とりあえず意味不明だ。


確かに、樹里とスッチは中学からの同級生で元から仲が良かったけど、最近は前にも増して一緒にいるところを見ることが増えたと思う。


でも、だけど、何で?


ふたりは何だかんだ言いながら、そういう関係だったのだろうかと、妙な詮索をしてしまうばかりだ。



「…奈々?」


弾かれたように顔を上げてみれば、メール画面を凝視していたあたしを、勇介はいぶかしそうな目で見つめていた。


思わずごめん、と焦ったように言ってみれば、彼はつまんなそうな顔で肩をすくめる。



「つか、俺の話は流されたわけ?」


「…えっと、何だっけ。」


「だからぁ、夏休みの話だって。」


あぁ、と言った。

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