星屑
あたしだって周りに反対された中で、それでもママは産んでくれた。


つまりはあたしも決断ひとつで今、この場に生きていなかったかもしれないということ。


確かにこの年で子供を産むなんて、想像すら及ばない。


どうなるかもわからない選択をするよりは、堕ろした方が良いとも思う。


けど、でも、殺すってことでしょ?



「…そん、なっ…」


「じゃあどうすれば良いのよ!」


吐き出すような沙雪を前に、また言葉が出なくなる。


一番の当事者である大地くんがこの場にいないということは、せめて責任で一緒にいることすら放棄したということだろうか。



「スッチだって何か言えよ!
お前だってぶん殴りに行かなきゃ気が済まねぇだろ!」


ヒロトは怒鳴り散らすが、肩口を掴まれた彼は視線を外したままだ。



「やめてって言ってるでしょ!
そんなことしたってどうにもならないじゃん!」


樹里まで怒り、あたし達だけしかいない店の中は、もう本当にめちゃくちゃだった。


悲しくて、悔しくて、唇を噛み締めているのに涙が溢れる。


今更になって、こうなる前に何か出来なかったのかと、後悔ばかりだ。



「さゆだってホントは赤ちゃん産みたいもん!
でも父親がいないなんて可哀想すぎる!!」


じゃああたしは、可哀想なの?


出掛かった言葉は、だけども言えるはずなんてなかった。


うちの家庭の事情を知っている勇介はこちらを一瞥するが、沙雪を責めるべきではないとわかっているのだろう、何も言わない。

< 234 / 418 >

この作品をシェア

pagetop