星屑
まるで挑発するようなヒロトの瞳は、いつかを思い出す。


勇介は彼を見て、後ろにいるあたしを確認し、ハッと笑った。



「ふたり揃ってどうかした?」


目を細め、彼は首を傾けるいつもの癖。


それが癪に障ったのだろうヒロトは、眉を寄せて勇介の元へと歩み寄る。



「あの女が欲しいなら、葛城にやるよ。
俺もう、いらないから。」


瞬間、ガッ、と響いた鈍い音。


目の前で、ヒロトが勇介を殴り、彼は廊下に倒れ込んだ。


それでもあたしは、聞き間違いなのだと思いたかった。


だって勇介は、少なくともこんなことを言う男ではなかったはずだ。



「ただの遊び事で、本気になるなんて笑えるよね。
ちょっと甘いこと言っただけなのに、何勘違いしちゃってんだか。」


口元を拭いながら立ち上がった勇介は、やっぱり冷たい瞳をしていた。


そしてヒロトを見て、また笑う。



「お前、あんな馬鹿な女が良いなんて、どうかしてんじゃない?」


再びガッ、と鈍い音が響いた。


あたしはただ、呆然と立ち尽くしたまま、言葉の意味さえ受け入れられない。


ヒロトは拳を止めることなく、勇介を殴り続ける。


血が、彼のそれを汚していた。



「おいヒロト、何やってんだよ!」

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