星屑
再び戻ってきてしまった、音楽室。


泣くわけでもなく、無言のままに言葉を持たないあたしの腕は未だにヒロトに掴まれたままで、なのに今はみんなまでいる。



「なぁ、あれってどういうことだよ!」


スッチが思い出したように声を荒げる。



「ムカついたから殴ったんだよ。」


それでもヒロトは、あたしのためなのか、多くを語ったりはしなかった。


スッチは聞く意味はないと判断したのか、早々にため息を混じらせるように諦めるが、でも樹里は未だ納得なんてしていないような顔。


だからあたしは視線を外し、口を開いた。



「勇介はあたしのこと、もういらないんだって。
だから関係ないし。」


「は?!
てか、意味わかんないし!」


あたしだって意味わかんないよ。


でも、言うほどの気力もなく、自嘲気味に笑うだけ。



「で、アンタは勇介にいらないって言われて、今度はヒロトに逃げてんの?」


「やめろよ!」


さすがにヒロトが制止したが、でも彼女はぐっと唇を噛み締めた。



「一番意味わかんないのって奈々なんじゃない?
あたし、勇介と同じくらい、アンタのしてることも理解出来ないから。」


それは、不倫してたヤツが言える台詞じゃないだろう。


でも、樹里の言葉も当然で、そんなことは自分が一番よくわかっている。



「言いすぎだろ、樹里!」


止めに入るのは、いつもスッチだ。


勇介とあたしだけの問題だったはずなのに、もう収拾がつかないところまできてる。

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