星屑
「喧嘩なんかしないでよ!」


沙雪は涙混じりにそう言った。


樹里もヒロトもバツの悪そうな顔に変わり、俯く。



「とりあえず落ち着こうよ、みんな。」


スッチが言った瞬間だった。


樹里はひとり背を向け、音楽室から逃げるように出て行ってしまう。


その横顔が泣いているように見えたのは、気の所為だったのだろうか。



「おい、樹里!」


焦ったようにスッチは彼女を追い、沙雪はそちらを一瞥するが、でも一瞬迷ってから、ここに留まることを選んだようだ。


ヒロトは未だにあたしの腕を離してはくれないけれど、でももうどうだって良い。



「ねぇ、奈々。」


沈黙を破った沙雪は涙を拭い、言葉を選ぶように口を開いた。



「勇介くん、ホントは何か理由があるんじゃないの?
じゃなきゃあんなこと言うはずないよ。」


理由?


でも、あたしがそれを反復させようとした瞬間、彼が遮るように言った。



「アイツにそんなもんあるはずねぇだろ!
第一、理由がありゃ何やっても良いのかよ!」


ヒロトの言葉に、沙雪は口ごもってしまう。


あたしの所為でこれ以上険悪になるのが耐えられず、もう良いよ、と話を終わらせた。


今は勇介のことなんか考えたくないし、何より樹里の方が気掛かりだ。

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