星屑
沈黙だけが、広い音楽室を再び包む。


樹里もスッチも戻ってくる気配は一向になく、聞こえてきたのは、帰りのホームルームの終わりを表すチャイムの音だった。


あたし達は、一体どれくらいここにいたのだろうか。


長いため息を吐き出したのはヒロトだった。



「なぁ、帰ろうぜ。」


「じゃあさゆも一緒に帰る。」


それは多分、あたしとヒロトをふたりきりにさせないようにということだろうけど。


沙雪は一度として、あたし達のことを聞いてきたりはしなかった。



「お前はスッチんとこ行けよ。」


「さゆは奈々が心配なのっ!
てか、ヒロトくんに任せたくないもん!」


「…どういう意味だよ。」


言って、ヒロトは口元を引き攣らせた。


それでも結局は、沙雪が教室に戻り、自分の分とあたしの分のバッグを取って来てくれる。


そしてやっぱり変な組み合わせで、あたし達は帰ることとなったのだ。


樹里とスッチのことは、聞かなかった。



「ヒロトくんって、単車で来てんだと思ってたー。」


「朝は電車んが早ぇからな。
単車乗るのは遅刻してきた時だけ。」


「てか今日、朝から来てたんだぁ?」


沙雪とヒロトのまともな会話なんて、年に何度かしか聞かない気がするけど。


ふたりは、何も喋らないあたしを気にする様子もない。


と、いうか、今までヒロトがいなかったことの方が不思議なくらい、彼は自然にあたしの隣にいる。


これじゃあまるで、昔に戻ったみたいだ。

< 303 / 418 >

この作品をシェア

pagetop