星屑
「あたしとこんなとこで話してて、カノジョ怒るんじゃない?」


「奈々こそカレシ怒るんじゃない?」


問い返されたが、いないよ、とだけ、あたしは返した。



「マジ?
俺もこの前別れたばっかなんですけどー。」


どこまであたし達は似ているのだろう。


思わず笑うと、勇介はまた、笑いながら煙草を咥えた。


あたしの口の中にあったチュッパは完全に溶け切ってしまい、バニラの後味だけを残してくれる。



「あ、奈々まだ時間大丈夫?」


「…へ?」


「ちょっとデートしよう!」


そう言って勇介が指差したのは、真っ黒の単車。


目をぱちくりとさせていると、行こうよ、と彼は、あたしの腕を引いて立ち上がらせてくれる。


それが勇介のものだということはわかったが、思わずあたしは眉を寄せる。



「変なとこ連れて行かれそう。」


「そんなに俺って信用ない?」


こくりと頷いたものの、勇介は笑いながら乗ってよ、と言った。


まぁ、今更セックスをすることについて問題はないのだが、それにしてもどこに連れて行かれるのか。



「…落ちたりしない?」


「大丈夫だよ、ゆっくり走るし。」


そして被せられたヘルメット。


戸惑いながらもタンデムシートにまたがると、掴まっててね、と言った彼はエンジンを吹かす。


勇介のシャツをきゅっと掴むと、それは夜の闇を照らすように走り出した。


風を切り、次第に怖さよりも楽しさが勝り、少しばかりわくわくとしてきた自分がいる。

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