星屑
街外れの少し小高い場所には、歴史あるたたずまいの図書館があった。


もちろんそれは閉館していて、バイクを降りた彼は、あたしを手招きする。


その後ろに続くと、“立入禁止”と書かれたカラーコーンが置いてある。



「ねぇ、こんなとこ入って良いの?」


「この裏、景色すごいから。」


全然答えになっていないが、仕方なく立ち入り禁止を抜けて、図書館の裏側に向かった。


そこは丘のようになっていて、街の様子が一望出来る。


6階の自宅マンションで見る夜空よりずっと星が近くて、わあっ、と目を輝かせた。


勇介は、ヒールを履いているあたしの手を取ってくれ、芝生の上に腰を降ろす。


あたしもその横に腰を降ろし、ふたり、空を仰いだ。



「お気に召しましたか?」


笑いながら、彼は煙草を咥える。


こくりと頷いてやると、勇介は口元を緩めた。


多分、あの夜にあたしが言った、満天の星が見たい、という言葉を覚えていたのだろう。


魔法使いじゃないことはもうわかっているけど、でも、ちょっと嬉しいと思う自分がいる。



「ここ、よく来るの?」


「昔ね、発見したんだよ。
それからは、何も考えたくない時とか、たまに来たり。」


ふうん、と言った。


後ろ手に手をついて足を投げる勇介と、膝を抱えているあたし。


同じものを見て、同じ気持ちを共有して、少しだけ楽になれた自分がいる。



「ありがと。」


「ん?」


「星、綺麗だから。」


あぁ、と勇介は笑う。

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