星屑
「お前、俺に隠れてまだその男と会ってたのか!
馬鹿にするなよ、ふざけやがって!」


男は血走った目でこちらに駆け寄り、静香の髪の毛を掴み上げた。


きゃあっ、と聞こえる彼女の悲鳴と同時に、バチン、と乾いた音が響く。


彼は静香を殴ったのだ。



「おい、何やってんだよ!
静香のお腹には子供がいるんだぞ!」


思わず止めに入ったのだが、



「お前みたいな得体の知れない男には関係ないだろうが!」


後から知った話、静香の恋人は、怒り狂うと暴力を振るうことがあったそうだ。


彼女は自分にそんな素振りさえ見せることなく、だからこの時それを初めて知った。


ただ、信じられなかった。


だって、どうして自分より弱い立場の人を殴ったり出来る?



「俺の子だって言い切れるのか!
お前は俺を欺いて、ずっとこの男と通じてたんじゃないのか!」


それでも彼は、静香に詰め寄る。


彼女は涙を流しながらそんなことはありえない、と何度も言うが、でも男がそれに耳を傾けることはない。


暴れる静香の恋人を必死で止めていると、割って入ってくれた店長が、「警察を呼ぶぞ!」と言ってくれ、男は舌打ちを混じらせて店を出た。


茫然自失とは、まさにこのことなのかもしれないけれど。



「静香、とにかく病院だ!」


でも一番に心配なのは彼女の体のことで、急ぎタクシーに乗せ、病院に連れて行った。


不幸中の幸いと言えば良いのか、お腹の子にも静香にも異常なんてなかったけど、でもやっぱり彼女は泣いていた。


だからそれは、自分の責任なのだと思った。



「ごめん、静香。」

< 385 / 418 >

この作品をシェア

pagetop