星屑
勇介が持っていたのはやはり屋上へと通ずる鍵だったようで、彼は慣れた手つきでそれを開ける。


キィッと少し錆付いた音がして、ドアが開いた。



「すっごーい。」


高いところは嫌いじゃない。


手入れすらされていないその場所は、コンクリートが少し欠けていたりと汚らしかったが、それでも心が躍った。


勇介ってヤツは、秘密の場所をいっぱい知っているらしい。



「あんまそっち行くと危ないから。
つーか、ドアの近くだけは他の校舎から良い具合に死角になってんの。」


へぇ、と返した。


どうやら彼は、相当ここでサボっているようだ。



「何でここの鍵とか持ってんの?」


「そりゃあ俺が魔法使いだからでしょ。」


「はいはい。」


呆れるようにあたしは、仕方がなくドアに背中を預けた。



「で、ホントは?」


「ホントは先輩に貰ったんだよ。
昔、すんげぇ弱い用務員のおっさんがいたらしくて、先輩がそいつ脅して合鍵作ったんだって。」


なんてろくでもない鍵なんだ。


喜んでしまった分、顔も知らない用務員さんが可哀想になってしまうが。



「で、俺はこの鍵の三代目の所有者ってわけ。」


「…何それ、受け継がれてんの?」


「そんな感じ。」


風が吹いて、やっぱり呆れながらも抜けるような青い空を見上げた。


雲がたゆたう様を見ては、それ以上怒ることも出来ないのだが。

< 46 / 418 >

この作品をシェア

pagetop