星屑
ママがいない日は、8割の確率でいつものバーに足を運ぶ。


ダーツもしないくせにダーツバーに行くなんて、と言われるかもしれないが、店長のシンちゃんはママの友達。


彼は30代半ばでめちゃくちゃ格好良いくせに、実はゲイなので、あたしの良きお兄ちゃんのような存在なのだ。


カウンターの一番隅は定位置で、勇介に声を掛けられたのもここだったんだけど。



「奈々、お前どうしたんだ?」


「どうもしないけど。」


そういえば、と彼は、あたしの前にグラスを置きながら、思い出したように言葉を手繰り寄せる。



「奈々、前に来た時勇介と話し込んでたよな?」


一瞬驚いて、でもすぐに眉を寄せて聞き返す。



「…勇介のこと、知ってるの?」


「知ってるも何も、よくここ来るし。」


やっぱりあたし達は、今までお互いの存在を知らなかったことの方が不思議なのかもしれない。


シンちゃんは、グラスを丁寧にタオルで磨きながら、少しばかり楽しそうなご様子だ。



「アイツ、ダーツ上手いんだ。」


「へぇ、知らなかった。」


「まぁ、お持ち帰りされたことはママには黙っててやっからさ。」


ブッと飲み物を噴き出しそうになり、驚いたままに彼を見た。


が、シンちゃんはやっぱりその反応に満足した様子で口元を上げている。



「…見てたの?」


「つか、俺の向かいで口説かれてたしなぁ。」


広い店じゃないんだし?


なんて言いながらニヤつく顔は、大人の色香を纏っているから腹が立つ。

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