星屑
やっぱりその日も、あたし達はキス以上のことはせず、簡単に別れた。


あれからも、勇介の観察は続けているし、向こうも多分、あたしを観察しているのだと思う。


互いに公認のストーカーというか、そんな感じ。


だからそんな感じのまま、ずっとこの先も続いていくんだと思っていたのに。



「奈々ー!」


廊下側の窓から身を乗り出してあたしを呼んだ人物の姿に、思わず顔が引き攣った。


樹里も沙雪も驚いた顔してて、正直色んなことがヤバいと思う。



「なぁ、化学の教科書貸してー?」


そう、勇介がへらへらと笑う。


状況なんて一切飲み込めないが、とても良い状況とは言い難い。


あたしはこんなヤツと仲が良いとは思われたくなんてなくて、焦ってその傍まで行き、ぱしっと叩いた。



「アンタ、何で一番遠いクラスまで来てそんなこと言うのよ!
第一、他に貸してくれる女なんかいくらでもいるでしょ!」


そうなんだけどさぁ、と彼は言う。



「ちょうど通りかかったし、ついで?」


たくさんの“優しい女子”がいることは否定せず、やっぱりあたしは呆れることしか出来ない。


てか、コイツはいつも、何をするにも突然だから困る。



「ねぇねぇ、土屋くんと奈々ってどんな関係ー?」


口元を引き攣らせたままに佇むあたしをよそに、沙雪は勇介に向かって目を輝かせている。


さすがは沙雪、馴れ馴れしく見せずに近づくのがお得意だ。



「ただのエッチな関係だよ。」

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