星屑
「お前、何でそんな不貞腐れてんだよ、犯すぞ。」


何でその程度で犯されなければならないのか。


ため息を混じらせ、あたしは目前の彼を小さく睨む。



「ゲイのくせに。」


「おい、ゲイ馬鹿にすんな。」


そう言って、シンちゃんはあたしよりもっと怖い顔でこちらを睨み返す。


口調や眼光鋭いところは、きっとヒロトと同じなのだろう。


だからこそ、あたしはアイツが嫌いになりきれないのだろうけど。



「何か最近、お前ここに逃げてくること多くなったなぁ。」


「そう?」


「そうだよ、自覚ねぇの?
あんまひどいとママに言うぞ。」


「ママは別に怒らないよ。」


「でもあんま心配させんなよ。
何だかんだであの人、お前のこと大事にしてんだから。」


それは知ってる。


と、いうか、あたしのことを生まれた時から知ってるらしいシンちゃんは、いつもそんな風に言う。



「どうせ男のことだろ?」


「そんなんじゃないっての。」


シンちゃんは煙草の煙を吐き出しながら、あっそ、とだけ。



「なぁ、トキ。
この馬鹿どうにかしろよ。」


そして彼は、トキくんに向かってぶつくさ言い始めた。


彼はシンちゃんの弟で、やっぱり見目麗しく、あたしのお兄ちゃんみたいな人。


この店の手伝いをしてるが、だからってゲイではない。

< 85 / 418 >

この作品をシェア

pagetop