星屑
「何かあった?」


問うてみれば、一度手元のグラスに視線を落とし、彼は瞳をあたしへと滑らせる。



「どうして?」


「元気ない顔してるから。」


と、いうか、最近の彼はどうにも物憂げだ。


勇介は自嘲気味に口元を緩め、奈々には敵わないなぁ、と肩をすくめる。



「よくある家庭のトラブルってヤツに加えて、まぁ色々とね。」


全てを言うわけでもなく、彼は漏らす。


確か、両親が不仲だったんだっけ、と前に聞いた話を手繰り寄せた。


視線だけでシンちゃんを追い払うと、舌打ちを混じらせた彼は向こうへ行く。


これでやっと、静かに会話が出来るのだろう。



「この前さ、ごめんね。」


「良いよ、別に。」


別に、何をされたというわけでもないのだから。


もしかしたら勇介は、家庭に居場所がないと思っているのかもしれない。


だからこうやって、夜な夜なフラついているのではないだろうか。



「で、色々って?」


「それは秘密。」


あそ、とあたしは言う。


今日の彼はダーツをする雰囲気でもなく、ただ単純に酒を飲みに来たような感じ。


あたし達は、揃ってダメダメな高校生だ。


勇介は、いつも笑ってるからか、余計に今日は元気がなく見える。

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