星屑
男のことでここまでテンションが上がる沙雪は、色んな意味ですごいと思う。


雲は流れながら、くっついたり離れたりを繰り返していた。


まるでそれが人の営みにも見えて、悲しいことだな、と思うけど。


樹里はヒロトのグループと仲が良い。


ふたりも含め、数人が同中出身だからで、アネゴ肌でサバけている彼女だけに、みんなから好かれているらしいが。


そこへきて、沙雪が勇介のグループの大地くんに惚れたとなると、どうなるのだろう。


何だか面倒なことにならなきゃ良いけど、と思いながら、空を仰いだ。



「浅倉!」


声に弾かれたように顔を向けると、担任教師があたしを手招いていた。


嫌な予感が脳裏をよぎるが、そこまで歩を進めると、



「ちょっとこれ、職員室まで運んでくれ。」


これ、と言われたものは、積み上げられたノートの山。


あからさまに怪訝な顔をしてみれば、お前だけ提出してないだろう、と言われ、言葉が出ない。



「自分で運べば?」


「先生ちょっと、第一校舎まで行かなきゃいけない用があるんだ。
だから頼むよ、浅倉。」


じゃあな、と逃げるように彼は言い、有無を言わさず押し付けられた格好になった。


見つめていても、ノートの山が小さくなったりはしない。


沙雪に視線を送ったが、彼女は遠巻きに手をヒラヒラとさせ、手伝う気なんて微塵もないと言ったご様子だ。


不貞腐れるようにあたしは、ノートの山を持ち上げた。


30センチ以上はあるだろうそれは、腕に重くのしかかり、一応か弱いあたしには、結構キツイものがある。


仕方がなくもだらだらとノートを抱えて歩いていると、廊下にしゃがみ込んでいる人影がこちらを捕らえた。


そして彼は無言で立ち上がり、ひょいと山の半分以上を奪うように取られてしまう。



「…手伝ってくれんの?」

< 95 / 418 >

この作品をシェア

pagetop