星屑
あたしがヒロトを嫌いになれないのは、こういう一面を見せられるからなのかもしれない。


別に、と言った彼だったが、不器用な優しさがあるのは知っている。



「ありがとね。」


言ってやると、ヒロトは不貞腐れた顔で目を逸らす。


照れてるっぽくてちょっと可愛い。


あたしが持っていた山だったものは、数冊になり、そのほとんどを彼が持つ。


欠伸をしながら歩くヒロトを一瞥し、眠そうだね、と言ってやった。



「…バイト、大変なの?」


「んなことねぇけど。」


ヒロトの家は、うちと同じで母子家庭。


お兄さんはすでに家を出ているので、彼は今、お母さんとふたりで暮らしている。


で、ヒロトはバイトをしてて、だから学校にも来たり来なかったりなのだ。



「あんま無理しちゃダメだよ?」


「奈々が俺のこと心配するとか、雷落ちそう。」


「は?」


「つーか、裏がありそうで怖いんすけど。」


こいつ、あたしを一体何だと思っているのか。


折角心配してやったというのに、腹の立つヤツだ。



「ヒロトって素直じゃないよねぇ。」


「それ、お前だけには言われたくねぇから。」


「はいはい。」


彼はちっと舌打ちを混じらせた。


そして職員室の扉の前まで来たところで、ノートの山をあたしへと返してくる。

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