月夜の送り舟
 
サイは死んだカッパの代わりに送り舟をやることにしました。
そのためには、何としても立派な送り舟に仕立てあげなければなりません。
今まで何の準備もせず、放っておいたことが悔やまれました。

夜の送り舟は初めてのことでした。
昼間の送り舟なら、何度も経験があり、見栄え良くすることもわけのないことでした。
しかし、今回は夜の送り舟です。
サイには提灯をいくつもぶら下げるぐらいしか思いつきませんでした。

そうはいっても、サイの持っている提灯はひとつしかありません。
誰か提灯を貸してくれる人を探すことにしました。

世間体などかまっている余裕はありませんでした。
正直にいきさつを話したのです。
でも、それが良くなかったのかもしれません。
誰も提灯を貸してくれませんでした。
 
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