月夜の送り舟
ふと見ると河の中からちょこんと顔を出しているカッパがいます。
あのとんがった唇は間違いありません。あの娘子です。
「なにか用でございますか」
「おお、やっと出てきたな。送り舟をわしがやってやろうと思ってな。ずっと探しとったんじゃ」
どんなにか喜ぶだろうと思ったカッパは伏目がちに言いました。
「サイさま、どういうつもりでございますか」
昨夜とはだいぶ雰囲気が違っています。
「お父さんが亡くなったと聞いてな。わしも何かしてやりたいと思ったんじゃが、わしにできることこれしかなかったんじゃ」