指輪
翌日、また私は電車に乗っている。


廃線間近のローカル線にお客は少なく鼻歌を歌っても誰にも迷惑をかけない。


それほど寂れているのだ。


昨日と同じ駅に降りて同じ道を歩く。


でも気分はいつもみたいに荒れていない。


むしろ何かにワクワクしているような感じだ。


それが妙に心地良くて、ついつい口元が緩んでしまう。



昨日と同じ場所に立って見渡してみるがあいつはいない。


はぁ〜と溜め息が漏れた。


「って私なんで溜め息なんか吐いてるの!別にあいつがいなくたっていいじゃない!」


大きな独り言を言って頭に思い浮かんだ事を否定する。
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