恋は盲目


と同時に賢くんと繋がっていた手が離され、私は反対側の腕を引かれた。



…―えっ?



一瞬のことでわからないが忘れられない香が鼻をかすめた。



忘れたくても忘れられなかった人。



「…か…ぐち…さん…?」


見上げるとすぐ近くに坂口さんの顔。




「人の女の評価を勝手に下げんな。」


いつものクールフェイスを崩さずはっきりしたテノールボイスが響いた。



「あ゛?お前何?ふざけんなっ」


睨んでくる賢くんに、冷静かつ、冷たい声で言い放った。


「ってか目障り。消えろ。」



重い声と視線に迫力負けしたのか賢くんは


「そんな女なんていらねぇし」


と吐き捨てて去っていった。



はぁ〜…


賢くんが行ったのを確認すると力が入っていた体から力が抜けていくのがわかった。


緊張してたんだ…私。



バカだ。



なんて考えてると肩を抱かれていることに気付いて慌てて離れた。



「す、すいません…」



目を見ることも出来なくて俯いたまま言った私に無言の坂口さん。



でも……痛いほどの視線を感じますが………





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