恋時雨~恋、ときどき、涙~
しまった……。


自分のノーコンさに、溜め息が出た。


それは見事に外れ、ボールペンは健ちゃんの左頬の近くを通過して、エレベーター横の壁にぶつかった。


振り向いた健ちゃんの顔は、完全にひきつっていた。


エレベーターの扉が開くと、数人の人たちがいっせいに乗り込み、扉が閉まった。


健ちゃんは、床に転がったボールペンを拾って、わたしに言った。


「真央のボールペンか」


わたしは、肩をすくめて頷いた。


ボールペンをじっと見つめていた健ちゃんが、突然、大きな口でわははははと笑った。


そして、わたしの所まで歩いてきて、少し屈み加減になりながら言った。


「危ねんけ。ボールペンは、投げたらいけません」


わたしは、健ちゃんからボールペンをひったくって書いた。


【日曜日
 どこに連れて行ってくれるの?】


メモ帳を見た健ちゃんは、目を大きくした。


「でも、日曜日は予定があるって」


わたしはこくりと頷いて、またメモ帳にボールペンを走らせた。





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