恋時雨~恋、ときどき、涙~
眉毛を描いて、頬にオレンジ色のチークをのせる。


ピンク色にしようか悩んだけど、確か、前に静奈が「元気に見える色」そう言っていたことを思い出し、オレンジ色にした。


クローゼットを開き、水色のホルターネックのワンピースを着た。


膝丈で、裾がふわふわしているシフォン生地になっている、お気に入りの1枚。


お父さんが買ってくれたもので、勿体無くて滅多に着ない。


わたしはヘアピンとハードスプレーを胸に抱えて、1階に駆け降りた。


キッチンでは、まだ、お父さんとお母さんが何かを話し込んでいた。


わたしは、お母さんの肩を叩いて、ヘアピンとハードスプレーを差し出した。


〈おだんご頭にして〉


「おいで」


お母さんはにっこり笑って、わたしを連れて寝室のドレッサーの前に座らせた。


昔から、おだんご頭はお母さんにしてもらうことにしている。


わたしがやると、どうしても、おだんごの部分がいびつな形になってしまうからだ。


でも、お母さんは手先の器用な人で、細かい作業が得意だ。


お裁縫も、料理も。


あっという間に、わたしの頭のてっぺんに大きなおだんごを作る。





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