恋時雨~恋、ときどき、涙~
でも、本当に辛そうに話すその顔を見ていると、なぜだか、ひどく泣けてくる。


「でも、真央に会って、変わろうって思うようになった」


健ちゃんの過去に何があったのか、わたしには分からない。


でも、辛いことがあったのは痛いほど分かるような気がした。


「泣くな」


健ちゃんが、わたしの涙を親指ですくってくれた。


「真央は、強いな。かっこいい。おれも、真央みたいに強くなれると思う?」


わたしは、メモ帳にボールペンを走らせた。


【けんちゃんは強いよ
 わたしなんかより
 ずっと】


メモ帳を見せると、健ちゃんがぱっと笑顔になった。


「ありがとうな」


わたしは頷いて、また、ボールペンを走らせた。


【ライオンほどじゃないけどね】


わたしがフフンと胸を張ると、健ちゃんは悔しそうにわたしを睨んだ。


「本当に、負けず嫌いだんけな。生意気な女だんけ。なんか、悔しい」


わたしは笑った。


けたけた笑うわたしに、健ちゃんはいつもより強い力でデコピンをした。


そして、海に向かって何かを言ったようだった。




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