恋時雨~恋、ときどき、涙~
【何て言ったの?】


肩を叩いてメモ帳を見せると、健ちゃんが八重歯を見せて笑った。


そして、わたしからメモ帳をぶっきらぼうに奪った。


わたしに背を向けて何かを書いたあと、メモ帳を閉じてわたしのポシェットに押し込んだ。


「真央は幸せになれるよ。虹に、お願いしといたから」


帰ろう、そう言って、健ちゃんはわたしに背を向けてすたすた歩き出した。


健ちゃんの背中に夕陽が当たって、眩しい。


わたしはポシェットからメモ帳を取り出して、急いでページを捲った。


その一文を見つけた時、わたしの時間が止まったような気がした。





【真央のお願いが、全部、かないますように】





わたしは足元に何か落ちていないか、目を凝らして探した。


波打ち際に、1枚の貝殻を見付けた。


わたしは、それを拾って健ちゃんの背中目掛けて投げた。


振り向き様に、健ちゃんの唇が動いた。


「痛てんけ。なにすんだ」


貝殻は、見事に健ちゃんの後頭部を直撃した。


しまった……。


肩をすくめるわたしを、健ちゃんは不機嫌そうに睨んでいた。




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