恋時雨~恋、ときどき、涙~
それに、話しておきたいことって、何だろうか。


気になり始めると、きりがなかった。


でも、何か大事な事なんじゃないかと、直感した。


耳が聴こえないわたしと、わざわざ直接会って話したいだなんて。


メールよりも、遥かに面倒に決まっている。


でも、メールではできない話だから、会おうと言っているのだろう。


「真央?」


静奈が、わたしの顔を2回あおいだ。


「どうするの?」


薄暗い夕暮れ時の小雨に、静奈のきれいな顔立ちは良く映える。


〈行ってくる。駅前なら近いし〉


ここから歩いて10分もかからずに行ける距離だ。


でも、本当の理由は、話しておきたいことが気になって仕方なかったからだ。


静奈の両手が、心配そうに小さな動きをした。


「私も、一緒に行こうか? そしたら、通訳してあげられる」


わたしは、首を振った。


〈大丈夫。唇は読めるから。それに、静奈はバイトがあるでしょ?〉



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