恋時雨~恋、ときどき、涙~
わたしは、慌ててメモ帳にボールペンを走らせた。


【ごめんなさい
 話ってなんですか?】


「ああ、そうだったね。ごめん。よく、似てたから、つい」


似てたから?


わたしが首を傾げてみせると、亘さんはスーツの内ポケットに手を突っ込んだ。


亘さんが内ポケットから取り出した物は、1枚の写真だった。


「これ」


亘さんが、わたしの前にそれを置いた。


わたしは、その写真のその人物を指差しながら、亘さんの顔をじっと見つめた。


亘さんが、ゆっくり頷く。


「そう。それ、健ちゃんだよ」


やっぱり。


写真の中の健ちゃんは、まだ、あどけなさが残っている。


高校生の時の写真ではないだろうか。


髪の毛も短くて、学ランを少しだらしなく着こなしていた。


健ちゃんの隣に、見たことのない女の子がひとり写っている。


ふたりの背後には満開の八重桜の木と、抜けるような青空が広がっていた。


健ちゃんの隣でやわらかく微笑んで写っている女の子を見て、わたしは、違和感を覚えた。




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