恋時雨~恋、ときどき、涙~
どうやら、店員さんがカップを割ってしまったらしい。
ワックスの効いた艶々した床に、白い破片が細かく散っている。
あれ、どんな音がして、割れたのだろう。
割れた破片を片付ける店員さんを見つめていると、亘さんが肩を叩いてきた。
「外、雨すごかった?」
亘さんの唇を読んで、わたしはこっそりがっかりした。
心のどこかで、カップが割れる音を教えてもらえると思っていたからだ。
もし、今、目の前に居るのが亘さんではなくて、健ちゃんだったら。
大きな口と、オーバーリアクションで、その音を教えてくれたのだろう。
わたしは、小さく微笑んで首を振った。
【小雨でした】
そう書いてメモ帳を差し出すと、亘るさんは「そう」と爽やかに微笑んだ。
「でも、天気が悪いのに、ごめんね」
そう言ってから、亘さんはじっとわたしの顔を見つめ始めた。
なんだか、毛穴の奥まで透視されているような気がして、くすぐったい気持ちになった。
わたしは、右手の人差し指を左右に振った。
〈何?〉
あ、と思った。
だから、わたしはその手をすぐに引っ込めた。
亘さんが困った顔で首を傾げたからだ。
ワックスの効いた艶々した床に、白い破片が細かく散っている。
あれ、どんな音がして、割れたのだろう。
割れた破片を片付ける店員さんを見つめていると、亘さんが肩を叩いてきた。
「外、雨すごかった?」
亘さんの唇を読んで、わたしはこっそりがっかりした。
心のどこかで、カップが割れる音を教えてもらえると思っていたからだ。
もし、今、目の前に居るのが亘さんではなくて、健ちゃんだったら。
大きな口と、オーバーリアクションで、その音を教えてくれたのだろう。
わたしは、小さく微笑んで首を振った。
【小雨でした】
そう書いてメモ帳を差し出すと、亘るさんは「そう」と爽やかに微笑んだ。
「でも、天気が悪いのに、ごめんね」
そう言ってから、亘さんはじっとわたしの顔を見つめ始めた。
なんだか、毛穴の奥まで透視されているような気がして、くすぐったい気持ちになった。
わたしは、右手の人差し指を左右に振った。
〈何?〉
あ、と思った。
だから、わたしはその手をすぐに引っ込めた。
亘さんが困った顔で首を傾げたからだ。