恋時雨~恋、ときどき、涙~
わたしは健ちゃんを見つめているのに、健ちゃんはわたしを見ていないんだと思うと、嫉妬にかられた。


帰ろう。


そう思ってメモ帳を鞄にしまおうとした時、亘さんがわたしの手を掴んだ。


「待って! ごめん、落ち着いて」


わたしは、亘さんの手を振り払った。


「だから、そういう所が似てるんだよ」


亘さんが、溜め息をこぼした。


そして、窓を見つめた。


曇りガラスの窓に、大粒の雨が激しく打ち付けている。


亘さんが、言った。


「果江は、担当していた医師と恋に落ちた。でも、健ちゃんを忘れることが、できなかったんだよ。この2年、ずっとね」


【できなかった?
 どうして分かるの?
 連絡先、分からないのに?】


メモ帳を見せて首を傾げてみせると、亘さんはゆっくり頷いた。


そして、ネクタイを緩めた。


「昨日、家にエアメールが届いた。アメリカからだったよ」


亘さんはスーツの内ポケットから、一通のエアメールを取り出して、わたしの前に置いた。




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