恋時雨~恋、ときどき、涙~
耳が聴こえない面倒なわたしより、移植手術に成功した果江さんと幸せになるべきなのだ。


お母さんから膝の手当てをしてもらい、わたしは部屋に閉じこもった。


小さな宝石箱を開く。


おもちゃの指輪やネックレスに紛れ込んで、ひまわりの髪飾りが入っている。


花火大会の夜、健ちゃんがわたしにくれたものだ。


硝子細工のそれは、窓ガラスから滴る雨粒にかざすと、プリズムしてきれいだった。


ひまわりの髪飾りで、短い前髪をとめてみる。


黒い窓に映る自分を見て、情けなくて仕方なかった。


なんてひどい顔を、わたしはしているのだろう。


ひまわりの髪飾りがあまりにもきれいで、わたしがみすぼらしく見えるだけだ。


窓に映るわたしは、魂が抜けたような目をしていた。








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