恋時雨~恋、ときどき、涙~
わたしには、できないと思う。


好きな人の記憶から消されてしまうなんて……。


「好きなもんは、好きやから、しょうがないんやで。絶対、ハワイに行ったる」


悲しくなってしまうほど、幸は前向きな女の子だった。


まっすぐな、女の子だ。


出逢った日から、幸はそういう子だった。


何に対してもポジティブで、とにかく真っ直ぐで。


人の気持ちを、何よりも最優先する。


自分を犠牲にするのは、朝飯前で。


だから、わたしは、幸という女の子に惹かれて行ったのだ。


幸が、わたしを指差した。


「真央もやで」


わたしは首を傾げた。


「辛い事があっても、諦めたらあかん。今が辛くても、いつか、全部うまくいく日が来る」


そうなのだろうか。


わたしは肩をすくめて、力なく微笑んだ。


「だから、幼馴染みのこと、支えてあげなあかんで」


わたしはしっかりと頷いて、改札口を潜り抜けた。




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