恋時雨~恋、ときどき、涙~
たまたま同じデザインの物を、この子がしているだけなのかもしれない。


この子が静奈だと、認める気になれなかった。


中島くんが、わたしの肩を叩いてきた。


「おれ、知ってるんだ。この世界に染まると、なかなか抜けられなくなるってこと」


わたしは、中島くんの唇から目を離すことができなかった。


「おれの姉さんが、そうだから」


悔しそうに表情を歪めながら、中島くんは言った。


「姉さん。風俗の世界に染まって。今はどこに居るのかも分からない」


中島くんは背中を丸めてだまり込んでしまった。


しばらくして、中島くんが立ち上がった。


「風俗の世界から足を洗わせたいなら、早い方がいいよ」


わたしは、何も言い返すことができなかった。


教室を出る直前に立ち止まり、振り向いて中島くんは言った。


「戸田さんも、そこで働いてるよ」


わたしは自分の目を疑った。


足がすくんで、しばらく動けなかった。


広げたままのそのページを、そっと閉じた。


すぐに中島くんを追い掛けて、メモ帳にボールペンを走らせていたら、もっと、深いところまで知ることができていたと思う。


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