恋時雨~恋、ときどき、涙~
でも、辛い試練は立て続けに起こる。


わたしに、優しい雪が降ることはなかった。


彼女の帰国がすぐそこまで迫っていた事を、わたしはすっかり忘れていたのだ。










12月に入り、晴天が続いた。


「静奈が言うておったわ。旬からきいたんやて? 隠しとってごめんな」


短大の学食で、半月ぶりに、わたしと幸は向かい合っていた。


わたしは首を振った。


学食は広々としていて、カレーライスのルウの香りがいちばん強く漂っていた。


「静奈もやめるように言うてんのやけどな……辞める気、なさそうやねん」


〈そう……〉


わたしはうつ向いて、背中を丸めた。


わたしは期待していた。


幸が風俗を辞めれば、静奈も一緒に辞めてくれるんじゃないか、と。


そう、期待していたのだ。


幸は、風俗をやめた。


今まで働いて貯めたお金は、全額、彼氏のお棺に入れたと幸は言っていた。


生まれ変わって、もう一度、巡り逢えたら今度こそ2人でハワイに行くためだという。


彼氏のことが心底好きだったと、幸は寂しそうに笑った。


幾日も泣き続け、ぼってりと腫らした目を緩ませて、無理やり笑っていた。


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