恋時雨~恋、ときどき、涙~
そして、順也の車椅子をぐいぐい押して、雨雪の歩道を加速させた。


わたしも夢中になって2人を追い掛けた。


わたしは、信じていた。


健ちゃんを信じていれば、この先、何があっても乗り越えて行けるんだ、と。











その日の夜、わたしはリビングの窓辺で、順也と向かい合いながら夜空を見上げていた。


「しーにラインしたんだ。でも、返事が来ない。だから、来てくれないかもしれない」


たった数メートルの空間を隔てて手話をする順也が、肩をすくめて冴えない表情をしている。


〈何て、ラインしたの?〉


「来週のバスケットの試合、見に来て欲しいって送ったんだけど」


〈来るよ〉


わたしは微笑んだ。


〈きっと、静奈、来るよ〉


わたしは自信満々に言った。


でも、本当のところ、正直自信がなかった。


「だといいけど」


そう手話をして、順也は夜空を見上げて、ぱっと笑顔になった。


見て、と順也が夜空を指差した。


わあ。


夜空を見上げて、わたしは嬉しくなった。



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