恋時雨~恋、ときどき、涙~
でも、順也は手話を続けた。


声は相手の目を見なくても伝わるけど。


手話は、目を見ないと伝わらないから。


しーと、真っ直ぐ向き合いたいんだ、と。


「本当は、別れたくなかった。でも、歩けない男が、好きな女を幸せにできるはずがないだろ?」


順也の瞳が、涙で滲んでいる。


静奈は頬を涙で濡らしながら、首を振った。


「それでも、私は、順也と生きて行こうって思ってたよ」


「でも、ぼくは、しーを傷付けたくなかったんだよ」


ふたりの手話は、まるでケンカをしているように激しかった。


「ぼくは、自分の立場をよく分かってるつもりだよ。でも、しーが必要なんだ」


「なによ、今さら」


それでも、ふたりの右手には同じデザインのペアリングがきらきらと輝いていた。


「迷惑なら、断ってくれていい。振られる覚悟ならできてる。こんなお荷物かかえて生きて行くなんて、ごめんだろうからね」


そう手話をしたあと、順也は両膝を軽く叩いた。


「バカじゃないの! お荷物なわけないじゃない。自惚れないで」


でも、と手話をしながら静奈は表情を曇らせた。


「もう、戻れない」


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