恋時雨~恋、ときどき、涙~
わたしがクラスの男子からからかわれた時、


「真央を泣かせたら、全員、日本海に沈めるよ!」


なんて、男をだまらせる静奈が、大好きだった。


わたしのために自ら手話を勉強してくれた女の子は、静奈だけだった。


静奈。


もう、会えないのだろうか。


わたしはフェンスにしがみついて、泣いた。


健ちゃんが、わたしの肩を叩いた。


「奇跡って、信じる?」


わたしは、健ちゃんを睨み付けた。


こんな時に、何を、そんなロマンチックなことを言うんだろうか。


頭にきて、わたしは健ちゃんを押し飛ばした。


〈信じない! 奇跡なんて、夢を見るのと一緒だよ〉


健ちゃんの唇が、ゆっくりと動いた。


「奇跡は、起きるから、奇跡だんけ」


もう、わけが分からなかった。


わたしの心臓は今にも張り裂けそうなのに、どうして、健ちゃんは笑っていられるのか、不思議だった。


胸が、むかむかした。


健ちゃんが、フェンス越しにホームの階段を指差した。


「カツーン、カツーン」


と健ちゃんの唇と指が同時に動く。


わたしは、自分の目を疑った。


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