恋時雨~恋、ときどき、涙~
健ちゃんの車で家に送ってもらい、わたしはみんなと別れた。
玄関の前に立ちすくみ、わたしは深呼吸を繰り返した。
お父さんとお母さんに、どんな顔をすればいいのか分からなかった。
もやもやした気持ちを両手いっぱいに抱えながら、インターホンのボタンを人差し指で強く押した。
玄関にぱっと暖かい明かりが灯り、ドアが開くとお母さんが立っていた。
「おかえりなさい。真央。寒かったでしょ。入って。シチューあるよ」
いつもと何も変わらない笑顔で、お母さんはわたしの肩を抱き家に入れてドアを閉めた。
靴を脱いでスリッパに履き替えていると、お母さんが慌ててキッチンへ走り出した。
わたしもあとを追った。
火にかけられていたシチュー鍋から、まるで積乱雲のような蒸気がもこもこと上がっている。
慌てて火を止めて、お母さんは笑いながら振り向いた。
「またやっちゃった。お鍋の底が焦げてる。お母さんは、だめね」
わたしは笑った。
〈お母さんは、おっちょこちょい〉
お母さんはぺろりと舌を出して、恥ずかしそうに肩をすくめた。