恋時雨~恋、ときどき、涙~
「本当だね。お母さんはだめね」


そう手話をして背を向けたお母さんが、震えながら動きを止めた。


わたしは、たまらず背後からお母さんを抱きしめた。


お母さんは、泣いていた。


「ごめんね、真央」


〈お母さんは、だめなんかじゃない! わたしのお母さんは宇宙一だよ〉


だから、泣かないで。


お母さん。


大好き。


お母さん。


ごめんね。


お母さん……。


休む暇なく両手を動かすわたしの手話を遮って、お母さんは言った。


「本当は、真央を置いて行きたくないのよ! 本当は、連れて行きたい」


お母さんの目から、大粒の涙が止めどなくこぼれ落ちては、床で弾けた。


「たったひとりの娘だもの。私の大切な娘だもの。離れたい親なんていないわ。何よりも、真央がいちばん大切なんだもの」


真央は、お母さんの全てよ。


その手話を見て、わたしは東京へついて行こうと、うっすらと決意した。


それなのに、お母さんはまたわたしを突っぱねた。


宇宙一、優しく突っぱねた。


「でも、真央はここに残るのよ」


わたしは、お母さんの両手に掴みかかった。



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