恋時雨~恋、ときどき、涙~
そして、わたしに背を向けて机の方へ歩いて行った。


静奈の背中が、いつにも増して華奢に見える。


声を掛ける事ができなくて、わたしはその背中をじっと見つめていた。


それは不意打ちだった。


突然、静奈が生まれ変わったような笑顔で振り向いた。


「真央は、今、幸せ?」


静奈の優しい指が、少し躊躇しながら訊いてきた。


わたしは少し考えて、しっかりと頷いた。


わたしは、幸せなのだ。


耳は聴こえないけれど、お父さんもお母さんも居るし、いつも笑っていてくれる。


幼馴染みの順也が居て、大好きな親友の静奈が居る。


本来ならば、ろう学校へ行くべきだったのだろうけれど、普通の高校を卒業することができて、こうして短大に通う事ができている。


友達は少ないけれど、それでも、わたしは幸せだ。





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