恋時雨~恋、ときどき、涙~
〈静奈は? 幸せ?〉


わたしが訊き返すと、静奈はにっこり微笑んだ。


でも、頷くことはなかった。


静奈は、机に並んである順也とのツーショット写真を手に取り、少しだけ頭を垂れ下げた。


そして、わたしに背を向けたまま、何かを言ったようだ。


束ねてアップにした遅れ髪の隙間から、静奈の細い頬が動いているのが見えた。


わたしはベッドから立ち上がり、静奈の肩を叩いた。


〈何て言ったの?〉


わたしが訊いても、静奈はただ笑って何も答えてはくれなかった。


ツーショット写真を元の位置に戻してから、静奈はようやく両手を動かした。


優しく動く静奈の両手が、わたしは大好きだ。


「真央が幸せなら、私も同じ」


でも、静奈はあの時、本当は幸せじゃなかったのだ。


幸せじゃないよ。


順也が浮気してるんだもの。


と、言っていたのだから。


もしも、わたしの耳が正常に機能して、聴けなかった静奈のSOSを拾うことができていたら、未来は少し変わったのだろうか。


静奈の未来も、順也の未来も。


静奈が、あんな事をしなくても良かったのだろうか。





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