恋時雨~恋、ときどき、涙~
それが、さらに亘さんの怒りに触れたらしかった。


痛い。


わたしは歯を食い縛った。


亘さんに掴まれている両肩に鈍痛が走った。


ひねり潰されてしまうかもしれない、と恐ろしくなった。


でも、その力は次第に弱くなり、亘さんは少し落ち着いた様子でわたしに言った。


「どうして、もっと早く、救急車を呼んでくれなかったんだ……意識がなくなる前に呼んでくれなかったんだよ」


亘さんの目は赤く充血し、みるみるうちに涙が滲んでいく。


「なんで……もっと早く」


愕然とした。


一瞬、頭が真っ白になった。


亘さんの言っていることは、最もな事だったから。


「こんなこと言っても無駄か。きみは聴力障害者だから。だから……嫌だったんだ」


胸を鋭い刃物で真っ二つに裂かれたような気分だった。


「だから嫌だったんだ。健ちゃんがきみと付き合うこと。きみが、普通の女の子だったら……」


亘さんの唇から、わたしはとっさに目を反らした。


もう、十分だ。


もう、これ以上は耐えられないと思った。


でも、亘さんはわたしの顔を両手で持ち上げて、真剣な顔で言った。


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