恋時雨~恋、ときどき、涙~
「これで、分かっただろ? 健ちゃんときみは、住む世界が違い過ぎるってこと」


〈そんなこと……〉


と手話をしかけて、でも、わたしは両手の動きを止めた。


「真央ちゃん。耳が……耳が聴こえないってことは、こういうことなんだよ」


目の奥がぐるぐる回る。


そんなつもりはさらさらないはずなのに、涙が滲んでくる。


「もし。もしも、だよ。今日、倒れたのが果江じゃなくて、健ちゃんだったら。きみに、何ができるの?」


わたしはハッとした。


そうだ。


亘さんの言う通りだと思った。


大好きな健ちゃんが目の前で倒れて意識を失った時、耳が聴こえないわたしに、誰とも会話すらできないわたしに、一体、何ができるというのだろう。


やっぱり、わたしと健ちゃんでは住む世界が違い過ぎる。


さっき、果江さんが言っていたように。


いずれ、わたしたちには限界がやってくる。


「できない」


亘さんが言った。


「やっぱり、きみが健ちゃんの彼女だなんて、認めることができない」


そう言って、亘さんは、ようやくわたしの顔から大きな手を静かに離した。



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