恋時雨~恋、ときどき、涙~
なぜだろう。


逆に申し訳なく思えてくる。


「本当にごめん」


まるで叱られた子犬のように小さくなって謝る亘さんに、わたしは必死に微笑んでみせた。


それから、わたしたちは待合室に移動し、果江さんを待つことにした。


殺風景な待合室の長椅子で、順也と静奈と亘さんが冷静に会話をしている。


待合室は、見渡せば見渡すほど無機質で本当に殺風景だ。


薄暗い証明。


オフホワイト色の壁に備え付けられている受話器。


ICU室と繋がっている電話らしい。


何も置かれていない小さな丸テーブル。


窓際に長椅子があって、室内の1番奥にパイプ椅子が3脚並んでいる。


大きな手が、わたしの顔を扇いだ。


「真央」


顔を上げると、健ちゃんが少し疲れた顔で弱く笑っていた。


〈なに?〉


わたしも笑顔を作って、人差し指を左右に振って小首を傾げてみせる。


「ちょっといい? 話したいことがあるんけな」


わたしは頷いた。


「パイプ椅子に座るんけ」


わたしと健ちゃんだけ、そっと長椅子を立ち、パイプ椅子に移動した。


「あのな」


と、健ちゃんがおもむろに両手を動かした。



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