恋時雨~恋、ときどき、涙~
「健ちゃんは馴れ馴れしいんだよな。おれと、しおりとも仲良くしてね」


わたしはにっこり笑って、頷いた。


「そうそう。私は夏が終わったら仙台だけど、いつでもラインしてね」


そう言って、しおりさんはわたしに手を差し出して来た。


嬉しくて、にこにこしながら汐莉さんの華奢な手を握り返した。


左藤亘(さとう わたる)。


坂井汐莉(さかい しおり)。


2人が恋人同士だと知ったのは、この時だった。


わたしは、有頂天だった。


この1週間で、アドレスが3件も増えたのだ。


わたしはとにかく嬉しくて楽しくて、笑ってばかりだった。


でも、静奈は笑わなかった。


切なげに、順也の背中を見つめてばかりいた。





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