恋時雨~恋、ときどき、涙~
細い絹糸のようなピンの先に、小さな黄色の硝子細工のひまわりが咲いていた。


夜空を彩っている花火が輝く度に、硝子細工にプリズムして、きらきらした。


それをそっと手にしてから、静奈はまたわたしの髪の毛に差し直してくれた。


「これ、どうしたの?」


静奈が訊くので、わたしは健ちゃんを指差した。


〈健ちゃんが、差してくれた〉


「そう。良かったね。よく似合ってる」


そう手話をした静奈が、突然、弾かれたように後ろを振り返った。


順也が、静奈を呼んだらしい。


「ごめんね。ちょっと、行ってくるね」


静奈は順也とふたりで、少し離れた場所へ行ってしまった。


わたしは、健ちゃんの腕を引っ張った。


「どうした?」


健ちゃんが驚いた顔で、わたしを見下ろした。


わたしは髪飾りにそっと触れた後、ありがとう、と手話をした。


「ありがとう……ああ、どういたしまして」


その時の健ちゃんの笑顔に、わたしの心臓がうさぎのように飛び跳ねた。


お父さん、お母さん。


それから、東京で暮らしているおばあちゃん。


順也と静奈。




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